今朝の目覚めは遅かった。ガンゴートリー(Gangotri、車道の終点にある聖地)の宿で朝食を済ませ、歩き始めたのは10時頃。ヴァラナスィ(Varanasi)で出会った日本人に「あんなのトレッキングといえませんよ。楽すぎて。」と言われていたが、実際にはアップダウンの激しい疲れる道だった。昨晩から下痢気味のせいだろうか。歩くのが得意な僕も、いつもの調子とは違う。100mごとにある距離表示が恨めしく、長時間の休憩を何度もとってしまう。ついに岩陰に座り込んでしまった。出せるものは出した方がいい。

 30分ほどたっただろうか。何とか落ち着いてきたので、ゆっくりと歩き始める。途中、ランドマークとなるような木の反対側に、いらない荷物(ヴァラナスィで買わされたサリーや、他国の「地球の歩き方」など)をひとまとめにして、ひっそりと隠した。これで大分、荷が軽く感じられるようになった。

 やはり、からだの中心に位置するお腹の調子が悪いと、なかなか元気が出ない。気分だけは元気なんだけど・・・。まあ、今日はボージバーサー(Bojbasa)までの13kmほどの予定。気長に気楽に歩こう。

 柔らかい針を持つマツの多い景観から、徐々に岩石の多い景観に移行してくる。そんな場所に、茶店の点在するチールバーサーがあった。ここでチャーイを飲みつつ、しばし休憩。しかし、健康を害しているこんな日は、まともな昼食もとっておきたい。そこで、同じチールバーサーの別の店に移動。一緒になったアメリカ人2人、ベルギー人1人と、ターリーを食べる。サンフランシスコから来た2人は、ラジオ局に勤めており、5ヶ月の休みをもらって旅しているらしい。ベルギー人の方はバスケの選手だったということで、ひたすらバスケの話ばかりしていた。小さい頃から、「テレビを見る=バスケの試合を見る」という生活だったそうだ。

 ボージバーサーに近づいた頃、馬に乗った日本人女性2人に出会った。またこの先でということで別れ、今度は話しかけてきたベルギー人男性(先程の人とは別)と一緒に歩く。彼はゴームク(Gomukh、氷河の末端でガンジス川(ガンガー)の源)よりも奥にあるタポバン(Tapoban)を経由し、その側の山(6500mほど)に登るらしかった。

 ボージバーサーは突然目の前にあらわれた。盆地の底に、水色の屋根を持つ建物群がある。それに数ヶ所のテント群。失礼ながらもう少し薄汚いところを想像していただけに、意外な感じを受けた。それらを見下ろせる場所に、4軒ほど茶店がある。先程の日本人とチャーイを飲む。僕は彼女らとは別の店でチャーイを注文したが、どうも2店の間で味が違うようだ。僕のほうはコーヒー牛乳に近い味がし、彼女らいわく「おいしい」。何か入れるものが違うのだろうか。不思議だ。この後、山の上の方では「まずい」種類のものもしばしば見かけた。

 Lal Babaのアーシュラム(巡礼者用の宿泊所)に下りてみる。髭のおっちゃんが流暢な英語で歓迎してくれた。101ルピーのdonate(寄付金)で、食事つきの宿泊ができるということである。部屋は、コンクリート床の上に直接薄い布団を敷き、さらに希望により掛け布団を貸してもらう形式。部屋にはベルギー人1人、インド人(おそらく)5人が一緒に泊まった。電気がない。灯を灯したランプが1つ。夕食まで、外に出ても寒いので、寝て待つ人が多いようだ。巡礼者とトゥーリスト、全然意識の異なる2者が、ここでは不思議と共存している。

 ちなみに、先程の2人の日本人はここを嫌い、別の宿に決めた。そちらにはベッドやレストランがある上、多少空気が暖かい。ひかれるものがあったが、アーシュラムに泊まるなんてなかなかできることじゃない。いい経験と思い、寒さの身にしみるこの宿にとどまった。

 7時半。夕食の呼び出しがあった。部屋からみんなで、ちょっと広めの土間に移動する。その隣の部屋では囲炉裏を囲み、何人かがどんどんチャパティー(小麦粉を水で練って薄く焼いたもの)を焼いている。

 僕たちは大きな円になり、器に料理が盛られるのを待った。チャパティー2枚とダール(豆のスープ)、それに水である。どうやら先程の髭のおっちゃんが発した「メニューのチョイスができる」という言葉はうそのようだったが、ありがたくいただく。僕はこれに加え、ライスもついでもらった。右手だけで食べるのは慣れてきたが、それでもなかなか難しい。ライスなんか長粒のぱさぱさしたものなので、こぼしてしまう。椅子に座れないこと、部屋が暗いことも、難しさに拍車をかける。

 食べ終わって外に出ると、真っ暗な闇の中に山の雪が怪しく光っている。ブルーに近い感じだ。そのままボーッとしていたら、今度はお祈りの時間だと告げられた。

 お祈り!?ワクワクした気持ちと緊張感がミックスする。装飾だらけの部屋に入ると、先程のおっちゃんを含め4人(うち3人は白衣)が祈っていた。シヴァ神の絵を前に、おっちゃんは火を使い、3人が鐘を鳴らしてリズムをとり、1人は歌っている。巡礼者は床にひれ伏すなど様々に動いているものの、トゥーリストのほうは何が何だかわからず、適当にリズムを取りながらボケーッと眺めるだけ。突然、全員にココナッツとハーブ(?)が配られた。どうしてよいかわからないので、臭いをかいでポケットに入れる。始まって30分ほど経ったろうか。1人ずつおっちゃんの前にひざまずき、退出した。しかし、祈りの時間はまだまだ続いていた。

 退出した僕らは、暗い中、何をするということもない。そのまま眠るだけ。明日の朝は早い。お休みなさ〜い。

                      次の日へ

 トップページへ戻る