岩手県遠野市における南部曲家の減少とその背景

河本 大地 (こうもと だいち)


キーワード:伝統的農村家屋、南部曲家(なんぶまがりや)、岩手県遠野市、農村景観


 世界各地で、伝統的な形態や地域的特色をもつ農村家屋が減少している。この現象は、どのような条件の下にどのような空間的パターンを示しながら進行しているのだろうか。

 本研究は、これについて岩手県遠野市の南部曲家(なんぶまがりや)を事例に検討したものである。岩手県遠野市を選択したのは、市域だけである程度独立した小都市圏域を形づくっており、減少の空間的パターンを把握するのに適しているからである。また、市域に多数分布していた南部曲家が、上から見るとL字型をしているため、複数年次の空中写真を用いることにより分布とその変化の把握が可能となるためである。
南部曲家は、平面L字型の家屋のうち片側が人間の居住空間、もう片側が馬の飼養空間となっていた。

 1948年以降に撮影された4回分の空中写真によって、南部曲家の分布とその変化を明らかにし、そのデータをGIS(地理情報システム)を用いて解析した。そして、減少の空間的パターンを形づくっている要因をフィールドワークによって明らかにした。

 得られた知見の概要は、以下の通りである。

 1.南部曲家は遠野市全域、特に人々の流動性が低く馬使役が盛んな地域に数多く分布していた。しかしその減少過程は、市全域で減少しつつも中心部近郊で早く縁辺部では遅れるという、空間的パターンを示した。

 .南部曲家の減少要因は、)兼業化の進展、各種大型農用機械の導入、1970年頃までの牛の導入といった経済的要因、)地域の共同性低下とそれに伴う茅替えの困難化、そして生活改善運動といった社会的要因、)屋内生活時間の増加、接客機会の減少等、家庭生活に関する要因のつに大別できる。経済的要因には、曲家減少の早遅との関係を見出すことができた。

 3.南部曲家の解体に伴い、居宅が小規模化し、大規模な付属建物が増加した。それは、曲家内部のつの空間が持つ機能の変化と関係していた。すなわち、)牛の導入に伴う家畜飼養空間の機能喪失と別棟畜舎への機能移転、)大型農業機械導入による作業・収納空間の重要性低下と別棟大型作業舎への機能移転、)居住空間がライフスタイルの変化等に対応できなくなったことである。


* 南部曲家(なんぶまがりや)は、曲屋、曲り屋、曲がり屋、曲り家、曲がり家などさまざまな表記がなされる民家様式である。


 
 上記の研究要旨の内容について、もっと詳しくお知りになりたい方は、下記の文献をご参照ください。
 上記は、下記の文献の要旨をもとにして、一部を加筆修正したものです。

 河本大地(2002):岩手県遠野市における南部曲家の減少とその背景.地域地理研究,7,pp.1-18.  


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